警備用語「立哨」「座哨」とは?意味や違い、配置事例をわかりやすく解説

警備員
監修者
竹村 直浩

<経営管理のプロ・数多の組織経営>
会計事務所経験からキャリアをスタート。
約30年間にわたりデータベースマーケティング、起業のみらずBPO業務および新規事業の立案に従事。
現在は、自らが代表を務める会社の経営の傍ら、経営管理および新規事業立案等の業務委託を請け負う

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警備業務で耳にする「立哨(りっしょう)」と「座哨(ざしょう)」は、それぞれ警備員の勤務形態を表す基本的な用語です。この記事では、その意味から実際に使用される現場、必要なスキルまでを詳しく紹介します。初めて警備に関わる方にも分かりやすく、図や表を交えて丁寧に解説していきます。

立哨とは

立哨は、警備員が所定の場所に立った状態で警戒・監視にあたる形式です。見た目には「ただ立っているだけ」のように見えるかもしれませんが、その実態は非常に重要な業務を含んでいます。たとえば、駅の改札やイベント会場の出入り口、工事現場など、人の流れや車両の出入りが頻繁な場所では、異常が発生する前の「予兆」を捉えることが必要です。立哨はこのような現場に適しています。

この警備スタイルの大きなメリットは、周囲の状況を即時に把握できる点と、異常があればすぐに動ける体勢にあることです。加えて、制服を着用して一定の姿勢で立つこと自体が、「警備員がいる」という抑止効果をもたらし、事件や事故の防止に寄与します。

一方で、長時間の立ち姿勢は身体に負荷を与えるため、適切な休憩の導入や、業務中の姿勢管理が重要です。近年では、立哨業務を行う警備員のために、日除けシェルターや休息スペースを確保する施設も増加しています。現場での快適さを保つことは、結果的に警備品質の向上にもつながるといえるでしょう。


座哨とは

座哨は、警備員が椅子に座った姿勢で警備業務を遂行する形態です。立哨とは異なり、モニター監視や受付業務といった静的な業務を中心に担うことが多く、マンションの管理室、企業のロビー、公共施設の総合案内所などで見られます。

座って警備を行うことで体力的な負担が軽減されるため、長時間勤務や夜間のシフトにも対応しやすくなります。しかし、座っていることで行動に制限が出るため、異常発生時には迅速な対応が求められます。したがって、座哨に従事する警備員は、常に周囲の状況に意識を向け、必要な時には即時に立ち上がって行動できるよう心構えを持つことが大切です。

また、座哨では来客対応や電話応対といった業務が加わることが多く、警備スキルだけでなく、ビジネスマナーや接遇の知識も必要になります。制服の着こなしや言葉遣い、表情などが施設の印象に直結するため、細部まで意識を向けた対応が求められます。


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立哨と座哨の違い

比較項目立哨(りっしょう)座哨(ざしょう)
姿勢立ったまま椅子に座った状態
主な業務内容警戒・誘導・抑止監視・来客応対・案内業務
配置場所出入口、交通整理、イベント現場受付、モニタールーム、管理センター
即応性高い(迅速に動ける)中程度(座ったまま対応準備が必要)
視認性高い(制服の可視性で抑止力あり)やや低い(訪問者対応が主体)
身体負担高め(体力・集中力の継続が必要)軽め(長時間勤務に適している)
要求スキル観察力・迅速対応力・体力接遇力・集中力・状況判断力

主な配置場所の実例比較

シーン立哨の配置位置座哨の配置位置
駅構内改札前、ホームの中央付近駅員室での監視、案内カウンター
商業施設メインエントランスインフォメーションデスク
工事現場資材搬入出入り口付近管理プレハブ内、監視用ブース
公共イベント会場入口、臨時駐車場付近管制室、仮設インフォメーション

求められるスキルセット比較

スキルカテゴリ立哨に必要な能力座哨に必要な能力
観察力広範囲の視野で異変を察知する力映像・来客の挙動を分析する力
即応力突発事案に即座に対応する判断力モニター通報後の対応指示の正確さ
接遇マナー通行人との適度な距離感と態度言葉遣いや笑顔を含む接客力
報告・連携力無線連絡で現場状況を正確に共有異常報告書の記録・連携処理力

実運用とテクノロジーの併用

近年の警備では、AIカメラや顔認証システムとの連動が進んでいます。しかし、それだけでは完結しません。例えば、AIが「異常」と判断した映像に対し、座哨の警備員が即時に対応判断を下し、必要であれば立哨員を現場へ派遣するという連携が求められます。このように、人と技術の融合によって、より高度な警備体制が実現されているのです。


まとめ

「立哨」と「座哨」は、警備業務の中でそれぞれ異なる目的と役割を持ちます。単なる姿勢の違いではなく、配置される環境、担う機能、求められるスキルすべてが異なります。立哨は即応性を武器に前線での対応力が重視され、座哨は観察と接遇力を活かして施設の顔となります。

それぞれのスタイルを理解し、現場に適した運用を行うことが、警備の質の向上と施設の安全確保につながります。警備業務を志す方、また導入側の担当者にとっても、この基本理解は今後の業務設計に大きな意味を持つでしょう。