業務効率を求めるあまり、気づかないうちに社内の情報セキュリティを脅かす存在、それが「シャドーIT」です。この記事では、シャドーITの基本的な意味から発生しやすい具体的な場面まで、企業が把握しておくべきポイントを解説します。
シャドーITとは何か?
組織の管理外で使われるIT機器・サービスの総称
シャドーITとは、企業や組織のIT管理部門が把握していないまま、従業員などが業務で使用しているIT機器やクラウドサービス、アプリケーションなどを指します。表向きには便利なツールですが、正式な承認を経ていないために情報漏えい・ウイルス感染などのリスクを高めてしまう存在です。
たとえば、従業員が個人のスマートフォンで業務メールをチェックしたり、無料のクラウドストレージに業務データを保存したりする行為は、すべてシャドーITに該当します。便利さと引き換えに、重大なセキュリティリスクを内在させているのです。
シャドーITが生まれる背景
業務効率化と現場の工夫が引き金に
なぜシャドーITが生まれるのでしょうか。その背景には、現場の「業務をもっと早く・簡単に進めたい」というニーズと、管理部門との「ツール導入のギャップ」が存在します。
主な原因は以下の通りです。
- 社内ツールの使い勝手が悪い
- 承認プロセスが遅い
- 社外とのやり取りに柔軟な手段が必要
- テレワークなど新しい働き方への対応不足
これらの理由から、従業員が自ら外部ツールを選び、無断で導入・使用してしまう事例が増えているのです。
シャドーITが発生しやすい場面とは?
日常業務のなかに潜む「無意識のリスク」
シャドーITは、特別なケースで発生するわけではなく、誰もが行いがちな日常業務の中に潜んでいます。以下の表で、代表的な発生場面とその内容を整理しました。
発生場面 | 内容 |
---|---|
クラウドストレージの利用 | 無断でGoogleドライブやDropboxに業務資料を保存 |
私用スマートフォンの業務使用 | 社用メールを個人端末で確認・送受信 |
チャットアプリの使用 | 社外とのやりとりにLINEやMessengerなどを使用 |
無許可のアプリインストール | 社内PCに独自の便利ツールや拡張機能を導入 |
一見便利に見えるこれらの行為も、情報漏えい・マルウェア感染・管理不能なデータ拡散につながる危険があります。
シャドーITによるリスクとは?
セキュリティだけでなく、企業の信頼も損なう可能性
シャドーITがもたらすリスクは多岐にわたります。とくに問題なのは、情報管理の「可視化」ができなくなる点です。管理外での情報流通は、漏えいが発覚したときに「どこで、誰が、何をしたか」を追跡できず、対処が困難になります。
以下のようなリスクが具体的に想定されます。
- 個人情報や顧客情報の漏えい
- ウイルス感染によるシステム停止
- 社内ネットワークへの不正アクセス
- 取引先との信頼関係の崩壊
特にコンプライアンスを重視する企業にとって、シャドーITの存在は見逃せない問題です。
シャドーITを防ぐための対策
管理と教育の両輪でリスクを抑える
シャドーITをゼロにすることは現実的ではありませんが、そのリスクを抑えるための対策は可能です。以下は、組織として取り組むべき2つの代表的な対策です。
- 許可されたツールの明確化と制御
社内で許可されたクラウド・アプリケーションを明示し、それ以外を遮断・監視できる環境を整備する。 - 従業員へのセキュリティ教育の実施
便利さよりも安全性を優先する意識づくりを徹底し、「知らないうちのリスク」を防ぐ。
特に教育面では、「なぜ使ってはいけないのか」を納得できる形で伝えることが、継続的な対策に繋がります。
まとめ
シャドーITは、便利さの裏に潜む見えないリスクです。従業員一人ひとりの行動が、企業全体のセキュリティレベルに直結します。発生場面を理解し、予防策を講じることで、大きな事故を未然に防ぐことができます。
組織全体でのITリテラシー向上と、適切な管理体制の整備こそが、シャドーITへの最善の対策です。