ゼロトラストとVPNの違いは?特徴についても解説

ウイルス対策
監修者
竹村 直浩

<経営管理のプロ・数多の組織経営>
会計事務所経験からキャリアをスタート。
約30年間にわたりデータベースマーケティング、起業のみらずBPO業務および新規事業の立案に従事。
現在は、自らが代表を務める会社の経営の傍ら、経営管理および新規事業立案等の業務委託を請け負う

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リモートワークやクラウド利用が進む中、企業のセキュリティ対策にも大きな変化が求められています。これまで主流だったVPNに代わって注目されているのが「ゼロトラスト」モデルです。しかし、両者の違いや適用範囲について十分に理解していないという声も多くあります。本記事では、ゼロトラストとVPNの基本的な違いや、それぞれの特徴、導入時のポイントをわかりやすく解説します。

VPNとは何か


社外から社内ネットワークに安全にアクセスする仕組み

VPN(Virtual Private Network)は、インターネットを通じて企業の社内ネットワークへ安全にアクセスするための技術です。社外にいる社員でも、まるで社内にいるかのように業務が行える環境を提供します。

主な機能は以下の通りです。

・通信の暗号化によるデータ保護
・IPアドレスの偽装によるプライバシー保護
・認証によるアクセス制限

これまで、VPNはテレワーク環境の構築手段として多くの企業に採用されてきました。


ゼロトラストとは何か


信頼しないことを前提としたセキュリティモデル

ゼロトラスト(Zero Trust)は、「何も信頼しない」ことを前提に、すべてのアクセスを検証・監視するセキュリティモデルです。従来のようにネットワークの内側を安全と見なさず、内部であっても厳格な認証とアクセス制御を行う点が特徴です。

以下のような考え方が基本となります。

・ネットワーク内外問わず常にユーザーやデバイスを検証
・アクセスは最小限(最小権限)のみに限定
・行動や通信内容もリアルタイムで監視・制御

クラウドの普及やサイバー攻撃の巧妙化により、境界型セキュリティでは守りきれないという課題が、ゼロトラストの登場を後押ししました。


ゼロトラストとVPNの違い


前提とアプローチの違いが大きい

以下の表に、ゼロトラストとVPNの主な違いをまとめました。

比較項目VPNゼロトラスト
基本思想社内ネットワークは信頼できるすべてのアクセスを信頼しない
対象エリア社内ネットワーク中心クラウド・社内問わず全体を対象
認証のタイミング接続時のみ常時、すべての操作ごとに再認証
管理対象ネットワーク単位ユーザー、デバイス、アプリ単位
セキュリティ範囲通信の暗号化が中心アクセス制御、挙動監視、デバイス管理など幅広い

VPNは「内と外」の区別を前提にしたセキュリティ、ゼロトラストは「どこからでも脅威はあり得る」という前提での防御設計です。


どちらを選ぶべきか?


組織の環境と目的に合わせて選定を

ゼロトラストとVPNは、それぞれに強みがあるため、次のような観点から使い分けるのが一般的です。

・オンプレミス中心の環境や限定的なテレワーク → VPNが適している
・クラウド活用やリモートワークが常態化している企業 → ゼロトラストが有効

また、以下のようなケースではゼロトラストの方が高い効果を発揮します。

・社内ネットワークが複雑で拠点が多い
・個人所有デバイス(BYOD)の使用が多い
・情報漏えいリスクや内部不正の懸念がある

一方で、ゼロトラストの導入には運用設計や技術的なハードルもあるため、段階的な導入やハイブリッド型運用も検討する価値があります。


まとめ


VPNとゼロトラストは、いずれも企業の情報資産を守るための重要なセキュリティ対策ですが、その前提となる考え方や仕組みは大きく異なります。

VPNはコストや導入のしやすさから多くの企業で導入されていますが、クラウド時代や高度なサイバー攻撃に対しては限界もあります。一方、ゼロトラストは柔軟かつ強固なセキュリティを提供できる一方で、導入には計画と運用体制が不可欠です。

自社の環境や課題を明確にした上で、どちらが適しているかを見極め、より安全で効率的なネットワーク環境を整えていきましょう。