警備員の隠語とは?現場で飛び交うコードワードを徹底解説

警備員
監修者
竹村 直浩

<経営管理のプロ・数多の組織経営>
会計事務所経験からキャリアをスタート。
約30年間にわたりデータベースマーケティング、起業のみらずBPO業務および新規事業の立案に従事。
現在は、自らが代表を務める会社の経営の傍ら、経営管理および新規事業立案等の業務委託を請け負う

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警備員の現場では、外部には聞き取れないようにするための「隠語」が日常的に使われています。これらの言葉には、万引き、不審者、応援要請など、緊急時の対応を効率化する目的があります。本記事では、代表的な隠語の一覧とその意味、現場での使われ方をわかりやすく解説します。警備業務の裏側にある言語の世界をのぞいてみましょう。

警備員の隠語とは何か

警備員の仕事は、施設の安全を守るだけでなく、人々の不安を最小限に抑えながら日常を支えるという、極めて繊細な業務でもあります。そのため、警備員同士の連絡には、一般の人々に直接伝わらないよう工夫された「隠語」が多用されています。これは無線やインカムを通じて、特定の状況を素早く、しかも第三者に悟られずに共有するためのコードワードです。たとえば、商業施設で「万引き」「不審者」といった言葉を口にすれば、来店客に不安を与えることは明白です。代わりに「510」や「カラス」などの隠語が使用されます。

隠語の起源は、軍事・警察組織で使われていた符号から派生したものが多く、警備業界でもそれが独自に発展しました。これらの用語は、施設の規模や種類、勤務形態によって細かく使い分けられ、業務の効率化とセキュリティ強化に貢献しています。隠語は一種のプロ用語であり、正しく使いこなすことで、警備員としての力量も高まります。現場での即応力や判断力が求められる職務において、隠語は単なる合言葉ではなく、安全の要とも言える存在なのです。


警備業界で使われる主な隠語一覧

警備業務において使用される隠語は、各企業や施設で微妙に異なるものの、全国的に共通して使われているものも多く存在します。以下の表は、代表的な隠語とその意味をまとめたものです。

隠語・コード意味
510(ゴトー)万引き発見
110番不審者または警察要請
240トイレに行くこと
721女性警備員応援要請
ライオン問題行動のある対象者
カラス万引き常習者
ZONE(ゾーン)要警戒エリアの呼称
雨天行動雨による特別警戒体制
終日対応一日中継続して警戒が必要
先発隊現場に先行するチーム

これらのコードは、現場の状況に応じて瞬時に共有される情報伝達ツールとして非常に有効です。とくに、急を要する場面では短い言葉で情報を的確に伝える必要があります。無線の通信速度や情報の正確性がそのまま対応力に直結するため、隠語の理解と習得は不可欠なのです。


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警備員が隠語を使う理由と目的

警備業務で隠語を使う第一の目的は、周囲に動揺や混乱を与えずに、緊急情報を迅速に共有するためです。たとえば、ショッピングモールで「不審者がいます」と発言すれば、客は警戒し、店内の雰囲気は悪化します。しかし、「110番対応願います」と言えば、警備員同士ではその意味が伝わり、一般客には内容が悟られません。

また、無線通信では時間が限られており、短いフレーズで明確に伝える必要があります。その点で隠語は非常に効率的です。さらに、業務中の会話が外部に漏れた場合のリスクも考慮され、情報漏洩防止の役割も担います。特に大規模施設では、来場者の数が多く、情報管理の難易度も高いため、暗号化された言語の使用が不可欠です。

隠語を使用することは、警備員としての責任感と信頼性を高める意味でも重要です。新任の警備員が現場で戸惑うことのないよう、OJTや定期的な勉強会で教育されることもあります。言葉の意味を正しく理解し、正確に運用できることが、迅速かつ安全な対応を可能にします。


現場別で使われる隠語の違い

警備業務は場所によってその性質が大きく異なるため、使われる隠語も変化します。たとえば、商業施設では万引きや落とし物、不審物への対応が多いため、それに関連した隠語が豊富です。一方、空港や駅などの公共交通機関では、テロ対策や人の流れの制御に関する隠語が使われます。

さらに、夜間警備と日中警備でも使用される言葉が変わります。夜間は不審者の侵入や設備トラブルへの対応が中心で、「S1」や「異常検知」といった専門コードが用いられるケースがあります。最近ではAI監視や顔認証の導入により、「ログ反応あり」などの技術系用語も増えてきています。

また、イベント会場では臨時スタッフや警備対象者に応じて「Aゾーン対応」「緊急動線」など、エリア単位での隠語が導入されることがあります。現場によっては、全体指揮官だけが知っている隠語も存在し、情報階層を維持するためのツールとしても活用されています。


警備員の隠語に関する注意点

隠語は便利な反面、誤用による混乱やトラブルの原因になることもあります。もっとも重要なのは、その意味を正確に理解し、適切なタイミングで使用することです。特に、似た意味を持つ隠語が複数存在する場合、それぞれの使い分けが重要です。たとえば「510」は万引き、「カラス」は常習者とされることが多いですが、混同すれば対応が誤る恐れがあります。

また、企業によって独自のコード体系を使っている場合もあるため、配属先によっては言葉の意味が異なることがあります。そのため、新人研修だけでなく、現場配属時にも再度学び直す体制が必要です。標準化されていない隠語は、転職や他社との合同警備の際にトラブルの元になることもあり、事前の共有が欠かせません。

さらに、隠語はあくまで補助的な手段であり、通常の対話が通じる状況では明瞭な言葉での報告が推奨されます。現場での判断力が試される瞬間でもあり、言葉の選び方ひとつで対応結果が変わるケースもあるため、注意深く使い分けることが求められます。


隠語以外に覚えておきたい専門用語

警備員として働くためには、隠語以外にも多数の専門用語を理解しておく必要があります。以下の表に代表的な専門用語を整理しました。

専門用語意味
立哨指定の場所で立って警戒する
巡回定められたルートを歩いて確認
不審物疑わしい荷物や物体
封鎖エリアの進入を一時的に制限
バーチャル巡回AIシステムによる遠隔監視

近年は、IT技術の発展により、警備業務も大きく変化しています。従来の目視確認だけでなく、カメラやセンサー、AI解析システムとの連携が必須となってきており、それに関連した用語の理解も求められます。「異常検知」「デジタル警報」などの概念も現場で通用するよう、教育体制が整えられつつあります。警備員は単に立っているだけでなく、テクノロジーと連携しながら現代社会の安全を支える高度な職業へと進化しています。


まとめ

警備員が使う隠語は、日常とは異なる特殊な現場でのやり取りに特化した、合理的で実用的な言語体系です。これは、目立たずに安全を守るという警備員の職務に直結しており、その使用には深い意義があります。隠語は業務の正確性を高め、コミュニケーションの円滑化と情報漏えいの防止に大きく貢献します。

また、現場や時代に応じて変化する隠語や専門用語への対応力も、プロフェッショナルとして必要な資質です。警備業務は、常に現場の変化や技術革新に対応しながら進化しています。そのため、現場で通用する実践的な知識と、柔軟な思考力を持ち合わせることが、今後ますます重要になっていくでしょう。