警棒の所持にルールはある?警備員にとって本当に必要な理由とは

警備員
監修者
竹村 直浩

<経営管理のプロ・数多の組織経営>
会計事務所経験からキャリアをスタート。
約30年間にわたりデータベースマーケティング、起業のみらずBPO業務および新規事業の立案に従事。
現在は、自らが代表を務める会社の経営の傍ら、経営管理および新規事業立案等の業務委託を請け負う

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警備員が腰に携帯する「警棒」。これは単なる防衛用具ではなく、法律に基づいた厳格なルールのもとで所持・使用されています。本記事では、警棒の所持に関する法的ルールや、警備業務においてなぜ必要とされるのかをわかりやすく解説します。

警棒とはどんな装備品か?

警棒の基本的な定義

警棒とは、主に警備員や警察官などが自己防衛や警備対象物の保護のために使用する装備品の一つです。金属製や特殊プラスチック製で作られており、伸縮式タイプや固定式タイプがあります。

多くは携帯性と即時使用性に優れ、コンパクトな状態から瞬時に展開して使用できる構造を持っています。

警棒の主な目的

警棒は「攻撃」ではなく「防御」を目的とした道具です。自分自身や他人の生命・身体・財産を守るために使用され、犯罪やトラブルに対して非致死的な方法で制止することを目的としています。

警棒の所持に関するルールと制限

一般人の所持は禁止

日本では、一般人が警棒を所持することは「軽犯罪法」や「銃砲刀剣類所持等取締法」に違反する可能性があります。理由なく警棒を携帯していると、違法な武器の所持と判断されるため、所持には明確な「職務上の必要性」が求められます。

警備員は法的に所持が認められている

警備業法に基づき、警備業務に従事する警備員は、一定の条件のもとで警棒を所持・携帯することが認められています。ただし、誰でも自由に持てるわけではなく、会社の規定や研修受講、使用記録の整備など、厳格な管理が求められます。

所持者区分警棒の所持可否条件・備考
一般人所持不可正当な理由なしでは軽犯罪法違反となる可能性あり
警備員(業務中)所持可研修受講・会社許可・業務日誌への記載が必要
警察官所持可法律上明確に認められた権限の下で所持可能
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警棒の使用には制限がある

正当防衛の範囲内でのみ使用可能

警棒の使用は、警備員であっても「正当防衛」または「緊急避難」に該当する場合に限られます。正当防衛とは、自分や他人の生命や身体が差し迫った危険にさらされたときにのみ、必要最小限の力で対抗する行為です。

攻撃目的での使用や、不必要に相手に傷害を与える行為は、たとえ警備員であっても過剰防衛として刑事責任を問われることがあります。

会社の規定や教育研修を受けることが義務

警備会社によっては、警棒の携帯・使用に関する細かな社内規定を設けています。使用方法やケーススタディを学ぶ「警備員教育」や、実技訓練の受講を義務付けている場合も多く、違反すれば携帯を禁じられるケースもあります。

使用時は報告義務がある

万が一、業務中に警棒を使用した場合は、すぐに上司に報告し、業務日誌や報告書に詳細を記載する必要があります。使用履歴が残ることで、後のトラブル防止や責任の明確化に繋がります。

警棒が必要とされる警備シーンとは?

金融機関・貴重品運搬などの高リスク警備

輸送警備や現金回収などの業務では、高額資産を扱うため強盗や襲撃のリスクが常につきまといます。こうした高リスク警備では、抑止力としての警棒携帯が重要になります。

夜間の施設警備や巡回業務

深夜や人通りの少ないエリアでの警備業務では、不審者との遭遇リスクが高まります。このような状況で身を守る手段として警棒の存在が有効です。

イベントや群集整理時の安全確保

不特定多数が集まるイベント警備では、群衆の混乱やトラブル発生時に警備員が先頭に立って対応する必要があります。接触や衝突が避けられない場面では、安全を守るための備えとして警棒の所持が推奨されます。

警棒を携帯するメリットと注意点

項目メリット注意点
抑止力所持しているだけで犯罪抑止効果がある過剰使用は刑事責任に問われる可能性がある
防衛手段緊急時の身を守る手段となる使用には正当防衛・緊急避難の範囲が求められる
プロ意識の向上所持に伴い緊張感・責任感が生まれる社内規定や法的知識の不足は大きなリスクになる

警棒を安全かつ合法的に扱うために必要なこと

初任研修や現任教育を確実に受講する

警備員として警棒を所持・使用するためには、警備業法に基づいた教育(初任研修・現任研修)を受ける必要があります。これにより、法律知識・倫理観・適切な使用技術を身に付けることができます。

実技訓練で正しい使用方法を身につける

警棒は力任せに振るう道具ではなく、「相手を傷つけずに制止する」ことが目的です。そのためには正しい構え方、展開方法、収納方法などを実技でしっかり習得することが欠かせません。

常に「使わないで済む」意識を持つ

警棒は最終手段であり、使わずに済むための対話力や判断力も重要です。言葉による説得、現場状況の把握、危険回避のための機転など、総合的なスキルを高めておくことが、警備員としての質を高めることに繋がります。

まとめ

警棒の所持には法的ルールと厳しい運用制限がありますが、それだけに警備員にとっては大きな責任と信頼の証でもあります。正しく学び、正しく扱い、いざという時に冷静に対処できるよう備えておくことが、安全で信頼される警備活動に繋がります。

ただの装備品ではなく、「安全の象徴」としての意味を理解し、警棒と向き合うことが、プロの警備員としての第一歩です。