施設警備の現場では、防犯だけでなく「防災」の視点も重要です。特に一定規模以上の建物では「防災管理者」の選任が法律で義務づけられており、その役割は日常の防火対策から緊急時の対応まで多岐にわたります。この記事では、防災管理者の役割と資格の取得方法、そして施設警備員が取得すべきかどうかについて詳しく解説します。
防災管理者とは?基本的な役割と背景
防災管理者の定義
防災管理者とは、大規模なビルや施設などにおいて、災害予防や避難計画の立案・実行を担う責任者です。消防法に基づき、一定の用途・規模の建築物には選任が義務づけられています。
法的根拠と対象施設
防災管理者は、延べ面積1万平方メートル以上の建築物や地下街などで必ず選任しなければならないとされています。主に多くの人が集まる施設が対象です。
区分 | 内容 |
---|---|
管理対象物 | 地下街、百貨店、オフィスビル、映画館など |
選任義務の根拠 | 消防法第8条の2 |
選任が必要な面積基準 | 延べ面積10,000㎡以上または一定規模の特定用途施設 |
防災管理者の主な業務内容
1. 防災計画の策定と実行
避難経路の確保や避難訓練の実施、防火管理計画の作成など、安全確保に必要な体制づくりを担います。
2. 従業員への指導と教育
災害時に迅速かつ的確な対応ができるよう、従業員や関係者に対して定期的に教育・訓練を行います。
3. 防災設備の管理
消火器や非常用照明、避難誘導灯など、施設内の防災設備の点検・整備状況を把握し、管理者や専門業者と連携します。
業務項目 | 内容 |
---|---|
防災計画の作成 | 火災や地震などの非常時を想定した計画立案 |
訓練・指導 | 避難訓練の主導、従業員への安全教育 |
設備の点検管理 | 消火設備や非常灯のチェックと業者との連携 |
防災管理者資格の取得方法
1. 資格取得の条件
防災管理者になるためには、所定の講習「防災管理者講習」を修了することが必須です。資格試験はなく、2日間程度の講習受講と修了で認定されます。
2. 講習の概要
各地の消防本部が実施しており、消防法や災害対策、設備管理などを中心に学びます。修了証を取得することで正式に防災管理者として活動可能になります。
講習概要 | 内容 |
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日数 | 原則2日間(地域によって変動あり) |
実施機関 | 各都道府県の消防本部 |
修了要件 | 講習出席と基本的な理解度の確認 |
修了後の資格名 | 防災管理者(消防長等による選任が必要) |
施設警備員は防災管理者を取得すべきか?
取得のメリット
施設警備員が防災管理者の資格を持つことで、警備と防災の両方に対応可能な人材として重宝されます。特に、ビル管理会社や大型施設では、多機能な人材が求められるため、キャリアアップにもつながります。
メリット項目 | 内容 |
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キャリアの拡大 | 警備と防災の両方をカバーする専門性が評価されやすい |
職場での信頼向上 | 緊急時の判断力や行動力が評価される |
配置基準の要件に貢献 | 警備員が資格保持者であれば、企業側も法令遵守の管理が容易になる |
推奨されるケース
- 複合施設やオフィスビルで常駐警備を行う警備員
- 防災訓練や緊急対応の指示を任される立場の人
- 将来的にビル管理者や施設責任者を目指している人
注意すべきポイント
1. 有効期限と更新制度はないが、知識の維持が重要
防災管理者講習は一度修了すれば資格に有効期限はありませんが、法令改正や施設の変更に対応するためには、継続的な情報収集や再受講が望ましいです。
2. 管理者選任は施設管理者の判断
資格を持っていても、自動的に防災管理者に「選任」されるわけではありません。実際の選任には管理者側の意向が必要です。
まとめ
防災管理者は、施設の安全を守る上で非常に重要な役割を担う資格です。施設警備員がこの資格を取得することで、より高度な対応力を持ち、現場での信頼性も高まります。安全を守るという使命において、警備と防災の知識を両立させることは、これからの警備業界においてますます求められる力となるでしょう。